新製品開発において、直前の調査によると高い購入意向が示されたのに、いざ発売してみると思いのほか売上が伸び悩んだという苦いご経験をされたことはないでしょうか? 原因はいろいろ考えられますが、もしかしたらそれは、ターゲットとした顧客の本質的な「購買力」が足りないのかも知れません。
一般に購入意向を・ハ的調査にかけるとき、 [ 非常に買いたい | <--> | 全然買いたくない ] などの5段階評価のような選択肢を対象者に回答させるパターンが多いと思います。 しかし、ここでAさんの回答した"非常に買いたい"とBさんの回答した"非常に買いたい"は本質的に同じと言えるのでしょうか? 前述のような通常の質問形式の調査では、その違いを見出すことはできません。
項目反応理論(IRT)は元来、テスト理論の枠組みで説明され、試験問題などを構築するための理論です。例えば、TOEICのような試験で860点以上を叩き出す人は、いつ、どこで、誰が受験しようが"十分な英語コミュニケーション能力を有する人"という天下無敵の称号が与えられます。 これを応用して、対象となる製品に対して調査をかけるというよりはむしろ、いわば絶対的・統一的な基準・尺度を作ってしまい、ターゲット顧客の「購買力」なる能力値を測ろうという考え方です。
製品開発の初期段階で、このように基礎的な調査を組み込むことでムダの無い投資、合理的な開発が遂行されることが期待でき、極めて有益であると思われます。
IRTは絶対的・統一的基準を作成することを第1の目的とします。そのためには調査設問項目がどのような性質を持っているのか吟味する必要があります。そのためモデル母数推定から等化や尺度変換と言った手順をふむ間に、設問項目を吟味することと"項目マスタ"の存在がかかせません。項目マスタとは、設問の雛形とそれに付随する母数の値を蓄積しておく場所です。このようにIRTの長所を生かすために、くりかえし調査を継続する・アとが肝要です。